ホームページがリニューアルしました。
新ホームページは
https://www.alumni-aoyamagakuin.jp/okayama/

支部
このサイトでは、岡山県支部の活動についてお知らせしています。
岡山県支部

永瀬隆氏没後11年追悼文 20年の密着取材から思うこと

2022.08.01 更新
永瀬氏の慰霊・支援活動を育んだ 青山学院のキリスト教の教え「ヒューマニズム」

KSB瀬戸内海放送
満田康弘


 僕が永瀬隆さんと初めて知り合ったのは1991年のことだった。当時、僕は高松本社報道部から岡山本社制作部に移ったばかりで、朝のワイド番組を担当していた。ある日、新聞に「タイの子どもにぬいぐるみを送ろう」と呼びかけた元陸軍通訳の記事が載っていて、それが永瀬さんだった。何となく興味を覚えた僕は倉敷市の自宅を訪ねた。しかし、永瀬さんは遥かに僕の想像を超えていた。元軍人がノスタルジーに浸る、といった類のものではなかったからである。
 「僕を通りいっぺんのボランティアと呼ばれたら困る」永瀬さんはそう言うと1冊の本を差し出し、これで大体のところは分かるから、と言った。岩波ブックレットの『「戦場にかける橋」のウソと真実』(永瀬隆)である。永瀬さんの生い立ちから戦場の出来事、戦後の人生が綴ってあった。

アルヒル桟道橋 (筆者 満田康弘)

 
 僕は泰緬鉄道のことなど、知らなかった。ましてや永瀬さんの人生など、知ろうはずもなかった。俄然、僕は泰緬鉄道にも永瀬さんにも興味がわき、いつかタイに行ってみたい、と思うようになった。1994年2月、初めてのタイ同行取材。永瀬さんがどう過ごすのか、見てみたい。そう思っていた。

陸軍の通訳だった永瀬さん


 カンチャナブリの連合軍共同墓地で、永瀬さんを1人待っている老人がいた。イギリス人の元捕虜だった。戦後、カナダに移住し、退職しタイで暮らしていた。彼は言った。「あなたは尊敬できる唯一の日本人だ」彼は握手を求め、永瀬さんら一行と一緒に慰霊を行った。
 難工事で400人が死亡したという「ヘルファイアーパス」には、数人のイギリス人の元捕虜がいた。怒りや悲しみ、戸惑い…彼らには様々な想いがあった。中でも強硬な一人は「奴らに顔を見せるな」と撮影を拒否した。ともかく彼らに話を聞いておきたい。しかし、足が動かない。ずるずるとその場を離れるしかなかった。
 僕は思った。「あんなに大変な目に遭いながら、永瀬さんは活動をつづけているのか」 これが永瀬さんをずっと取材するきっかけになった。
 1994年5月、2回目のタイ取材。「クワイ河平和基金」の奨学金の授与式があり、3人の看護学生に奨学金を贈ることになっていた。ほんの1週間ほど前、カンチャナブリの畑でアジア人労務者の遺骨が多数見つかった。パタヤの寺院にそれは安置されていた。寺院では3000人もの遺骨の供養を行ってきたという。「日本人はここに来たことがない」と寺の理事が言った。
 永瀬さんの活動の特徴は、連合軍の元捕虜に加えて、元アジア人労務者の慰霊と救済に等しく努力してきたことだ。また、元日本兵の遺骨がタイ西北部のメーホンソンに多数残されていると知った永瀬さんは、2000年に慰霊碑を建てた。永瀬さんによると、それは青山学院でキリスト教の教えを学んだことによるという。すなわち、一言でいえば、ヒューマニズムである。そして、同時に永瀬さんは仏教の教えを大切にした。四国八十八か所めぐりは計4回目にも及んだ。「等しく命を尊ぶ」こと。故に戦争を憎んだ。

虹を見る永瀬さん 2008年


 そして、永瀬さんの活動で、妻・佳子さんのことを忘れるわけにはいかないであろう。永瀬さんが弱気になった時、夫を常に励まし、時にはリーダーシップを取ってくれた。永瀬さんの活動を半分は佳子さんのおかげではないだろうか。2009年に佳子さんが亡くなった時、永瀬さんは一挙に老けてしまった。
 2011年に永瀬さんが亡くなったとき、クワイ河平和基金副会長のスワンナさんが僕にこう言った。「あなたはよく永瀬さんをドキュメンタリーを通じて見ている。平和基金は日本人がタイ人に贈るところに意味がある。やっていただけませんか?」

奨学生と共に


 こうして2012年から毎年1回、平和基金の授与式に出席することになった。2020年、今度はコロナ禍が襲う。3年間、授与式は中止になった。そして...2021年、僕は脳出血で倒れた。今、僕はリハビリに励んでいる。いつかタイを訪れる日を夢見て。


2022年7月


泰緬鉄道(現在のタイ国鉄ナムトク線)



クワイ河鉄橋の虹 2008年



2011年の永瀬さんの散骨


PageTop
  • 賛助会費納入サイト
  • 住所等変更手続
  • 校友会グリーンエリアご利用案内
  • 校友サロンのご紹介
  • イベント一覧

リンク

  • 青山学院オフィシャルサイト
  • 青山学院へのご支援をお考えの皆様へ
  • 宗教センターのご案内
  • 青山学院大学
  • 青山学院女子短期大学
  • 青山学院高等部
  • 青山学院中等部
  • 青山学院初等部
  • 青山学院幼稚園